
高齢化する街の活性化:角川介護予防センター

日本における介護予防は、高齢者の健康維持や運動能力の向上、社会・地域活動への参加を促し、高齢者の生活の質を向上させることで、介護や保険による支援を必要とする高齢者の数を減らすことを目的としている。これにより、政府の財政負担を軽減し、高齢者を支える若い世代の負担も軽減することができる。
角川介護予防センターは、高齢者の健康状態や運動能力の改善・維持に特化した特別な施設や独自のプログラムを提供する、予防介護の全国的な代表例である。同センターは、富山市が独自の物理的・財政的取り決めによって設立した。市民から様々な金銭や施設の寄付を受け、人口動態の縮小と高齢化により老朽化した公共施設を改造し、民間と協力して運営を行っている。
コンテクスト
対処すべき課題
日本は世界で最も高齢者の割合が高い国である。現在の少子化と平均寿命の伸びにより、この「超高齢化」の傾向は今後数十年間続くだろう。この顕著な状況は、日本政府にかつてない経済的・社会的困難を押し付けている。特に、年金、医療、長期医療制度にかかる費用の累積は重大な問題であり、労働力人口の減少により税収は減少している。とはいえ、高齢化社会の状況は地域によって異なり、富山市は全国の同程度の人口規模の都市に比べ、高齢化・人口減少のスピードが速い。65歳以上の高齢者の割合は現在28%(2016年)で、2020年には約30%に達すると推計されている。
所在地
プロセス
プロセスの概要
包括的な介護予防・健康維持システムは、高齢者が生き生きと暮らせるよう支援することが期待されている。高齢者の生活の質を向上させるために、公共サービスへのアクセスのしやすさ、より安全な地域、より双方向的な社会空間を費用対効果の高い形で提供する都市活性化の促進とともに、センターは重要な公共的役割を果たす。同センターは、地域に根ざしたアプローチを通じて、統合的で包括的なケアサービスを推進するための地域医療ネットワークの拠点である。この広義の活性化計画を具体化するために、地方自治体はプロジェクトに必要な資金を調達する必要がある。高齢化社会におけるニーズの変化を踏まえ、未利用地や老朽化した施設を新たな開発に転用するなど、既存の資産を活用することも考えられる。
ビルディング・ブロック
地域に根ざしたアプローチによる統合的で包括的なケアサービスの推進
富山市では、高齢者の総合的・包括的なケアサービスを推進しており、地域のネットワークが重要な役割を果たしている。同市では、各地域の高齢者の窓口として32の地域包括支援センターを設置し、専門家(看護師、社会福祉士、福祉介護支援専門員など)が高齢者の健康状態を把握・指導し、必要に応じて門川介護予防センターへの受診を勧めている。市はまた、市内の全高齢者の36%が加入している市のボランタリークラブとも連携している。このクラブでは、数人の会員にリーダーシップをとってもらい、地域に根ざした介護予防活動を推進し、支援センターや富山市と連絡を取り合っている。このような地域密着型の取り組みは、会員自身の健康に対する意識向上にもつながり、自立心を高め、地域間の助け合いを促している。
実現可能な要因
- 地域ネットワークを活用した高齢者向け介護サービスの推進
- 介護予防推進のための会員制度
教訓
予防医療は、急速な高齢化社会に適用されるべき重要な概念のひとつであり、高齢者の幸福度を高め、個人や公共サービスの財政負担を軽減することができる。また、高齢者が自立した生活を送れるよう支援し、慎重な長期看護を必要とする虚弱な高齢者の数を減らすことができる。介護予防サービスを他の公共サービスが提供する介護・医療サービスと統合し、地域社会とネットワーク化することで、より効果的・効率的に質の高いサービスを提供することができる。
公共資産の積極的な再利用
高齢化が進む地方都市では、中心市街地の高齢化率が高いため、中心市街地を高齢者に優しい街にすることが重要である。つまり、高齢者にとって安全で住みやすく、利用しやすい地域にすることである。富山市は、人口減少・高齢化という背景から複数の学校を解体・統合し、そのうちの1校を介護予防センターの敷地に活用した。中心市街地という立地は、中心駅からバス、ライトレール、コミュニティバスなどの公共交通機関へのアクセスも良い。
実現可能な要因
- 人口動態の縮小と高齢化を背景に、未利用の土地や施設を活用しようとする政府のイニシアティブ。
- 公共交通機関でアクセスしやすい広大な土地の確保
教訓
高齢化が進む中心市街地では、未利用地や古い施設(廃校など)を角川介護予防センターのような高齢者の生活の質を高める事業に活用することができる。未利用の土地や古い施設を積極的に再利用することで、こうしたプロジェクトの初期費用を抑えることができる。
多様な財務アレンジメント
門川介護予防センターは、富山市が市民からの寄付金と市の予算を使って設立した施設である。ある市民が高齢者福祉サービスの充実のために数億円(数百万円)を市に寄付し、市は小学校の跡地に介護予防センターを建設することにした。市はまた、運営開始前に複数の市民から寄付された貴重で有用な資産(温泉施設や運動用の特殊器具など)も譲り受けた。敷地は市の所有だが、施設の運営・管理は民間企業の共同事業によって行われている。
実現可能な要因
未利用地を活用し、民間事業者にコンセッションを与え、市民や民間企業からさまざまな寄付を募るという、同市独自の財政措置。
教訓
近年の高齢化傾向の中で、社会福祉事業への公的支出が増加の一途をたどる中、高齢者介護事業へのさらなる公的資源の投入は期待しがたい。厳しい予算制約の中で、地方自治体は多様な資源から資本資金を調達する努力をしなければならない。未利用地を活用する、民間事業者にコンセッションを与える、市民や民間企業から様々な寄付を募る(現金寄付、土地提供、関連機器など)などが考えられる。
影響
経済効果:介護保険制度や健康保険制度からの大きな支援を必要とする高齢者人口が減少する。この減少は、ひいては公的保険制度のコストを削減する。
社会的影響: 介護予防センターは、高齢者が活動的で、自立した生活を長く続けられるよう支援している。実際、同センターの会員141人を3ヵ月にわたって調査したある評価では、運動が彼らの身体的・精神的状態に良い影響を与えていることが証明された。その結果、立ち上がりや歩行能力が目に見えて向上し、心身の状態が改善したことを自覚するようになったことも明らかになった。
環境への影響 屋上や側壁に緑を配し、太陽光発電装置(3kW)を設置することで、ヒートアイランド現象の緩和や省エネルギーに貢献している。都心に立地し、自家用車ではなく公共交通機関でのアクセスが容易なため、道路交通渋滞の緩和や事故防止、ひいてはCO2排出量の削減にも貢献する。
受益者
- 富山市民
- 地元土地所有者